栃木リキュールとの出会い

栃木リキュールとの出会い

2023316

 

一件のメッセージが届いた。

31819日にコレド室町にて新酒の販売をします!スケジュール合いましたらぜひ!」

 

以前からお付き合いのあった栃木リキュールの原さんの作るリキュールは定期的に購入しており、クラファンなどの限定のリキュールも購入させて頂いていた。

コロナ禍以降はあまり連絡をとっていなかったため、久しぶりの連絡だった。

「前向きな意味で行けたら行きます!」

世間でよく言われる、信用してはいけない言葉ランキング堂々の一位「行けたら行く」ではなく、行きたい気持ちを全面に出した「行けたら行く」を発動。

 

 

318日当日、天候は豪雨。

電車を乗り継ぎ販売会場へ向かう。まさかの屋外だった。

 

(えぇ屋外?この豪雨強風の中……?)

 

てっきり商業施設の中のイベントスペースなどで設営しているものと思っていた。

まさかの屋外。

心配になりながらも会場へ向かう。

 

他のブースが撤収、縮小などしている中で原さんはそこにいた。

強風で商品説明のポップや並べた商品が倒れそうになっているのを押さえながら

 

「あ〜!まっちゃん久しぶり〜!」

 

元気いっぱい笑顔いっぱいで迎えてくれた

 

「お久しぶりです!」

「なんか誰も来なくて、どうしたんだろう」

「そりゃあこの天候ですし

「鳩しか来ない

「ハト……

本当にポツンと1人だけで頑張っている原さんがいた。

 

「いやぁ、とりあえず飲んだことがないリキュール全部買います」

 

元々色々なリキュールを買わせて頂いていたがしばらく期間が空いたこともあり、知らない新作がいっぱい並んでいた。気になるものがあまりにも多く、あれもこれもと言っているうちにほとんど全ての新作を購入していた。

 

そんなやりとりをしている中もテントから滴る雨水、強烈に遅いくるビル風

 

営業もあるので早々に会場を出てしまったがあの後もイベント終了まで1人で頑張っていたのだと思うと心動かされるものがあった。

 

 

店に戻り、いつものように開店。

新しく入荷したリキュールがあります、と常連さんに話しながら自分もまだ飲んだことがないリキュールを一緒に味見した。

 

「「「「?!」」」」

 

想像以上というか、今までと全く違ったスタイルだった。

栃木リキュール、原さんの造るリキュールは今まで比較的複雑で、複数の材料を混ぜ合わせた味わい深いカクテルのようなものだった。確かに美味しいがお客様へ伝えるのが難しいのもまた事実だった。

 

新しく購入させて頂いたリキュールはシンプルに単一素材でダイレクトにその香りを伝えているものが多く、いい意味でとても分かりやすく、伝えやすいものだった。ただただ分かりやすい訳ではなく、美味しい。そして何より香りがとても強烈だったのだ。

 

「マスター、これヤバくないですか……?」

「ちょっと僕も驚いてます」

 

その日にいらっしゃったお客様全員と栃木リキュールを堪能し、強く心を打たれた。

 

 

「えっこれ普通に買えるんですか?」

「栃木リキュールさんのHPで通販をしているはずです……

「えっっ?安いとかそういう次元じゃないのでは?原価計算してないのでは……?」

 

そう、品質の割にあまりにも安かった。

 

曰く、

「あんまり人気じゃなくて、HPから掲載を外したものもあって自分が買いたいと思う値段にしてるんだ。」

 

それにしてもこのクオリティ……

困惑しかなかった。

 

そんな中で一際異彩を放っていたものがある。

 

『花の時間 夜汽車のオーケストラ-薔薇-

バラのリキュールだ。

 

「ファ-wwww」

「香料不使用?ダウトダウトww」

「これはえっちだ

「香水じゃん」

「色気が溢れすぎて酒なのに18禁」

 

カウンターは大騒ぎだった。

香料、着色料を使わないでこのレベル。

尋常ではない。

 

これはもっと多くの人に知ってもらわなければ

そう思い数日後、Twitterで『夜汽車のオーケストラ』を紹介した。

定期的にお酒の宣伝をするが1円も貰っていない。美味しいものや面白いものは共有していくスタイル。

拡散されて、あまり多くの人に知られて入手困難になったら困る、という意見もある。とてもわかる。

しかし、そうやってこっそり使い続けていたリキュールや蒸溜酒が売れ行き不振で終売、生産中止になった前例が何度かあった。2度と手に入らなくなるくらいだったら入手困難くらいがちょうどいい。そう思い紹介に至った。

SNSのフォロワーが1万を超えており、宣伝をしたら少なからず影響はあるだろうと思った。説明不要、とりあえず飲めば誰にでも伝わる衝撃。

こんなに美味しいリキュールを造っているのに知られていないというそれだけで人知れず消えていってしまうのは悲しすぎる。生産者の心の詰まった美味しいものを共有するのはカウンターに立つバーテンダーとして当然の仕事だと思った。

 

突然注文が殺到し、色々なスケジュールを混乱させてしまっていないか、意図しない拡散のされ方で原さんの世界観を壊していないか、など色々と悩んだ。しかし多くの方に知ってもらいたい、飲んでもらいたいという気持ちがどうしても強かった。

 

2023年3月18日

栃木リキュールの会社沿革にも刻まれるほどの出来事『神楽坂の波動』の日である。

 これは原さんのTwitterでもご本人が公開していたので記載するが、本当に赤字が続いていて、大変な状況だったという。それを知ったのは後になってからだった。

神楽坂の波動凄すぎィ‼︎

 

そこから栃木リキュールには根強いファンがさらに増えることになる。

毎月のように製造される新作。季節感を大事にし、地元の素材や着色料を使わないスタイルを貫き、独特の商品名で人々の心を鷲掴みにしていったのがカウンターはもちろん、SNSを通じて伝わってきた。

 

製造から配送、販促まで全て原さんが1人で行っているとは思えないほどの熱量だった。

 

栃木リキュールとの出会い、もとい原さんとの最初の出会いは8年ほど前。

以前勤めていたBAR BenFiddichの頃の日本バーテンダー協会(NBA)の繋がりだった。

原さん自身も元々バーテンダーでコンペティションにも出場されており、宇都宮でお姉様とBARフルールドゥリスを経営していた。原さんは2018年リキュール製造に転身、現在もBARフルールドゥリスはお姉様が立たれている。

 

NBAの組織変革に伴い各支部の括りがなくなるということで最後の思い出にNBA六本木支部で栃木リキュールさんのところでオリジナルリキュールを作ろう!という企画があった。その時はビワの種を使ったアマレットを製造して頂いた。

 

そんなことを思い出し、原さんにとある相談を投げかける。

 

「うちで輸入しているパーリンカをベースにリキュールを造って頂くことは可能ですか?」

「もちろんです!」

 

即答だった。

そうして始まった『栃木リキュール』×Bar Pálinka』のコラボプロジェクト。

 

2023423

宇都宮の栃木リキュールさんへ弊社デザイナーチームと共に直接伺い、詳細を擦り合わせる。

奇しくもこの日は栃木リキュール創業日、そして弊社oooooの創業日でもある。運命を感じる……

ベースで使うパーリンカは白ブドウ。これと何と組み合わせるのがベストなのか話し合い、素材はわりと早い段階で決定した。

 

メロンだ。

 

季節的にも、組み合わせ的にも、一番いいと判断した。

弊社で輸入している「Szicsek Irsai Olivér(白ブドウ)」をベースに、静岡県産の最高級完熟クラウンメロンを合わせたメロンリキュール。想像しただけで美味しい。素材の時点で最強のリキュールであることが約束されていた。

 

アルコール度数や糖度については、原さんと松沢のバーテンダー2人で1%単位で微調整し仕上げた。

そのまま飲んでも炭酸で割っても美味しい、最強のリキュールを造るぞ!という思いから試作に試作を重ねた。試作サンプルを送って頂き、味見をして微調整。濾過したほうがいいのか無濾過の方がいいのか、他にハーブを加えるとどうなるか、本当に細かいところまで調整し、骨格はしっかりと感じることができるがアルコールの刺激が少しでも感じられない、それでいて香りが損なわれない絶妙なバランスを目指した。

 

余計なものは加えずパーリンカと完熟クラウンメロン、そして糖度調整のためのグラニュ糖のみ。

 

微調整が終わり、最終仕上げ品を改めて試飲。

 

これだ…求めていたのはこれですわ……

みんなメロメロになっちゃうやつ……めろ〜ん!

 

満を持して日本初パーリンカベースの高級リキュール、2023930()販売開始。

ストレート、ロック、ソーダ割りなどでシンプルに味わって頂きたい。

容量:200ml

度数:22%

価格:6,600円(税込、送料別)

販売数:80本

冷蔵保存推奨。

ラベルデザインは弊社グラフィックデザイナー川畑雄一郎

 

そして今後も他社様とのコラボレーションで作り上げたオリジナル商品をonewの「おともだち」である皆様にお届けする、という企画でonew & friends    onew &f を新たなブランドとして掲げることにした。

このラインナップは弊社ならではのお酒に対するこだわりと、デザインに対するこだわりを盛り込んだ「見ても飲んでも楽しい体験」を作れたら嬉しいと思っている。

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